ミミルのメモ帳

オタクJDの自己満足ブログ。日記、備忘録、趣味のはなし。

映画トムとジェリー(2021年版)感想

私は滅多に映画は見ない。よって、映画館はさらに行くことがない。

昨年のTBE7〜9話のとき、久々に映画館に行った。その前は「君の名は」、さらに遡れば亡国のアキト3・4章……数年おきに行く程度である。

 


しかし、最近は映画に縁があるようだ。知り合いに映画館に誘われてしまった。トムとジェリーを見るらしい。

トムジェリはたまーに見ることがある程度。ちなみにトム派。

映画はあまり好きではないが、ずっと忌避し続けるのはもったいない娯楽だとも思っていたので、3/24、重い腰を上げて映画館へと足を運んだ。

 

 

 

雑なあらすじ

 

とあるセレブがホテルで結婚式を執り行うことになった。臨時でホテルに雇われた主人公は己の実力を示すため奮闘する。

しかし、ホテルに隠れ棲むジェリーとそれを追うトムによって、ホテルがてんやわんやに。果たして結婚式は無事に執り行えるのか!?

 

 

 

 


感想(ネタバレなし)


正直に言って、私個人としてはあまり良い評価ができない作品だった。

トムジェリファンなら見る価値があるが、そうでない人はかなりしんどいと思われる。

 

 

実写とアニメの融合は、ある面では成功、ある面では失敗


今作では、実写の映像の中に、3DCGの動物たちが交ざっている。トムやジェリーはもちろん、魚や鳥、他の人の飼い犬なども全て3DCG。特にディズニーなんかの実写版は(プーさんやダンボなど)動物がリアルタッチになっているが、トムとジェリーは旧来のアニメのまま、現実世界でグリグリ動く。

現実世界にアニメの動物という、人によっては違和感がありそうな画だが、私は大成功だと感じた。例えば、道をトムが駆け抜けていくと、道の落ち葉(おそらく実写)がきちんと舞い上がる。一部ぼかされて演出されている部分もあるが、あまり気にならずに見ることができた。


だが、ストーリーとしては少し問題のある交わりだった。

トムジェリは基本的に、ジェリーがトムにちょっかいをして、怒ったトムがジェリーを追いかけ回す話だ。これはアニメの中なら(そして、それが全てなら)笑えるが、これが現実と化すと……大惨事

今回のストーリーの主軸はあくまで人間同士の結婚式であり、それに乱入する彼らはメインではなく、トラブルメーカーなのである。

アニメの程度ならまだ私も笑うことができたが、今回の「追いかけっこ」の惨状は、正直見ていられなかった。コメディを逸脱して、パニック映画さながらである。頭を空っぽにして見られたら面白かったのかもしれない。

 

 

子供は面白いと思えるのかも

 

私が見た回は子供が誰一人おらず(というか私含め3人しか見に来ていなかった)、実際どうか分からないが、子供が見る分には笑える作品かもしれない。

現実的に考えてしまう人にはちょっと心苦しいシーンが多かった。タイキックで笑えない人にとってはおそらく、この映画は苦痛になる。

 

 

総評

 

詳しくはネタバレありの項目で書くが、この作品の問題点は、「コメディな世界観をリアルな世界に持ってきたために、コメディがコメディでなくなってしまった」という点にある。

トムとジェリーの追いかけっここそがこの作品の華、恒例行事なのであるが(そのクオリティは高い)、それがもたらす甚大な被害(in現実)に笑えるかどうかが評価の分かれ目となる。私は笑えなかった。

ただ、二匹はトラブルメーカーではあるものの、その分終盤は大活躍してくれる。彼らのやり方で。

大団円で終わるため、そこは安心して観られるだろう。

 

 

 

ここまではネタバレなしの感想です。

ここからは若干ネタバレが入るので、ネタバレが嫌な人はブラウザバック。

 

 


感想(ネタバレあり)


※ネタバレありとはいえ、だいぶぼかして書いてある。詳しくは実際に見て確かめてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

終盤20分が無ければ最悪の映画だった


大変申し訳ないが、トムジェリファンではない私からすると、見ていられないシーンが多く、辛かった。


序盤のシーンから違和感がある(他のレビュアーの方も指摘しているので、私だけではないはず…)。

トムが「目の見えないピアニスト」のフリをしてピアノ演奏をし、おひねりをもらうシーン。「ネコがピアノを弾いている」ことよりも、「ネズミがダンスしている」ことの方がすごいとされるのは頷けないし、トムの嘘がバレた途端、全員からヤジを投げかけられるのは可哀想だった。トムは実際嘘をついた。だが考えていただきたい。ここまでされる謂れはない!

ちなみに、後半とある人から「その肉球でどう弾いてるの(意訳)」と言われているため、なおさらネコがピアノを弾けるのは常識なのかそうでないのか分からなくなってくる。


基本的に痛い目を遭うのはトムばかり。ガレージのシャッターに挟まれる、感電して高所から落下する(×3〜4回)、悪行はほぼ全てトムのせいにされる、等々。これはアニメ「トムとジェリー」でも恒例なのであるが、周りがリアルタッチなので余計に痛々しく感じる。特に、アイロンがトムの顔に直撃した時は、映画館から今すぐ出て行ってやろうかと思うほどの怒りが沸いた。たしかにトムの自業自得な部分もあるが、それにしては過度ではないだろうか。

ジェリーが責められるシーンが少ないのも問題だし、トムのことを理解してくれる人物が主人公しか居なかったのも可哀想だった。

そんな「トムいじめ」が大半を占める映画が今作。「いじめられた人がやり返そうとしたら怒られて、いじめた人はほぼお咎めなし」という、小学校みたいな仄暗さを感じて寒気がした。「仲良くケンカしな」……一方的では?


ストーリーとしては良く言えば王道、悪く言えばベタ。正直「結婚式をやる」という時点で、オチまで全て読めていたし、実際ほぼその通りの展開を迎えた。

途中なのに何度も帰りたいと思うほど不快感を覚えた作品だった。しかし、ラスト20分は全員が足を引っ張ることなく活躍するため、不快感なく観ることができた。あれがなければ駄作で終わっていただろう。まあ、ご都合展開ともいえてしまうだろうが、無いより余程マシである。

ついでにだが、エンドロール後のオチ。あれは要らなかった。せっかくスッキリとした気分で帰れると思ったのに……あの神妙な顔をした新郎と同じ気分で帰らざるを得なかった。台無しだし、全く笑えない。

 

 

感情移入できない、愛着が湧かない登場人物


トムはやることがいちいち愚か。ジェリーは他人を煽って楽しむ外道。……まあ元がそのようなアニメなのだが、今回二匹が引き起こした惨状を鑑みると、ちょっと度が過ぎる。

私は一応トム派だし、そのほとんどは同情して見ていたのだが、とあるシーンで誘惑に負けてしまったトムを見て「今それ一番やっちゃいけないやつだ!」と叫びそうになった。

また前述の通り、トムが酷い目に遭いまくるが、そのほとんどがジェリーのせい。トムジェリのファンには大変申し訳ないが、今作でジェリーのことが嫌いになった。本来強いもののはずのネコがネズミに酷い目に遭わされる」という構図に笑えたら良かったのだが、私には無理だったようだ。

終盤、二匹は協力体制を敷くが、その時しか心穏やかに見ることができなかった。大人になってしまったのかなあ……。


人間側の主人公の女の子も、結果的に大団円だったとはいえ、なかなか外道なことを最初にしている。

嘘をついてホテルに雇われているので、主人公がどれだけ本気で結婚式を成功させようとしているのか分からない。新郎新婦への優しさも、「ただチップが欲しいだけなのでは?」と邪推してしまう。失態を晒し、皆に騙していたことを謝るシーンも、「こうすれば逆に信用を得られると思ってやってるんだろうなあ」と考えてしまい、不愉快だった。

彼女の考え方や理念、キャラクター性はとても好きなので(あと可愛い)、もっと内面描写があれば納得できたのではないかと感じた。


主人公の上司(イベントリーダー?)は最初からおかしい人だったが、後半吹っ切れて非道になる。まともなキャラはおそらく片手で数えるほどしかいない(管理人、距離感が掴めない人、バーの人、新婦、騙されて履歴書を渡したお姉さん)。

 

そんな世界なので、どのキャラにも感情移入できないし、どのキャラにも愛着が湧かない作品となってしまった(元からトムジェリファンならともかく)。メインの登場人物のほとんどに「出てくるな」「要らんことすんな」と思わせる映画はなかなかないと思う。

 

 

音楽は素晴らしい出来


ここからは良かった点。

作中歌が多い。そして出来が良い。物語の最初から鳥たちのラップが始まる。これが愉快で楽しく、物語に没入していくことができた(ちなみにこのラップは外国で酷評されている。世界観に合わないらしい)。

歌の入りもそこまで違和感がなく、いいタイミングで流れるので心地よい。ジャンルも広く、ハードロックみたいな曲やしんみりとした曲まで様々。

歌詞は作品の内容に準じないように見えて、少しだけ通じる部分がある。そう、この「距離感」がジャスト。個人的に、作中歌はガッツリキャラの心情を描くものではないと思っている。あくまでもこの世界を彩る名脇役に徹する作中歌、グッジョブ。それが作中歌のあるべき姿だ。

 

 

伏線回収


ストーリーの流れとしてはベタだが、その過程で出てくる台詞やアイテムがそこそこ伏線回収になっている。その辺りは巧いと感じた。

台詞の回収はまあ予想通りだったが、アイテムの使い方は巧い。特に私が驚かされたのが、あの「Wi-Fi付きのローラースケート」と「軍用ドローン」。てっきり新郎の異常さを表すアイテムとしての役目で終わりと思っていたのだが、まさかあんな風に使うなんて! これだけは本当に想定していなかったので賛辞を送りたい。

 

 

 

総評

 

「トムジェリじゃなくても」というより、「トムジェリだから許された」


一応大団円エンドに落ち着いたため、今は心穏やかに感想を書けているが、胸糞展開に何度も心が折られかけた。


やはり「トムジェリ」はアニメの世界の中で輝くキャラクターなのであって、現実に連れてきてはならなかったのだ。

現実世界に、しかも人の大事な結婚式という題材に、人間側のシリアスとトムジェリ側のコメディを混ぜてしまったことで、コメディがコメディじゃなくなってしまった。人間側をもっとコメディ寄りにしたら──もしくはもっと巧く現実世界とMIXできれば、評価も違ったと思う。アニメ×現実の可能性を感じる作品ではあった。


私はこの映画を見る前に、先に観に行った人のレビューを確認していた。その中に、こんなものが。「トムジェリじゃなくても良かったんじゃね?」

正直、頷けてしまう。この映画は人間ドラマが主軸で、それにトム&ジェリーが介入する話なのである。トムジェリの起こしたトラブルが、複数の人間の運命を良い方向に変えたといえば、その通りなのだが……「結果的に」である。

しかし、それよりも問題を感じた部分がある。今作は、普段のトムジェリがどのような生き物か分かっているからこそ、二匹がどれだけ暴れ回ろうとも「トムジェリはそういうものだから」とどこか許せてしまう部分があった。これが無名のネコとネズミだったら? きっと散々な評価が下っていただろう(まあ、もっと違う話になっていた話も否定できないが……)。

つまり……「トムジェリだから許された」。そう結論づけられても仕方のない作品だと思う。


ここまでボロクソに書いてしまったが、さすがはワーナー。技術力については唸らせてくれる部分が多かった。

3Dモデルのトムジェリは2Dアニメーションのトムジェリと比較しても申し分ないどころか全く違和感がなく、アニメを踏襲した上で実写と違和感なく交ぜる映像表現は大変見事だった。

また、楽曲のセンスもよかった。作中何度も本編トムジェリのパロディがあるのも良い。ピアノのやつとか。これがトムとジェリーの追いかけっこ部分だけなら、評価は全く違うものになっていたと思う。

 

話も破綻していないし、演技力も申し分ない。おそらく、話の大筋を作る時点で間違っていたのだ。トムジェリを最初から協力路線……というのは面白みがないのは理解できるので、もうちょっと人間部分をコメディタッチに描けば、かなり良い作品になっていたように感じる。変に感動させようとしたのが問題だったのかもしれない。

 


あくまでこれは私の主観的な感想であり、見る限りレビューは概ね高評価であったことは付け加えておきたい。

私としては、残念ながら映画代に見合う価値を感じない作品だったが、トムジェリファンなら──あるいはアメリカンコメディを笑って済ませられる人なら、評価が違ったのかもしれない。現実と化したドタバタシーンで笑えるかどうか、それが評価に直結する映画ではないだろうか。

 


この金でプリキュア観に行けたな……

 

 

 

 


おわり